2020/12/05 15:48

毎年多くのお客様から寄せられるのが「雛人形や五月人形は誰が用意するのか?」というご質問です。

実はこの質問は人形屋という立場からするとはっきりとはお答えしにくいご質問なのです。
「一般論では母方がご準備するのが望ましいですが、ケースバイケースです」としか答えようがないのが現実です。

そもそも明確な決まりがあるわけではなく、ご家庭の事情や、その土地の風習などもございますので、それによってどちらがご用意すべきかは変わってきます。

では、なぜ一般的には母方からなのか。

一つの理由としては、雛人形はその昔「嫁入り道具」の一種だったからです。
特に上流階級では、嫁入りの際に誂える調度品のミニチュアを造らせ、嫁ぎ先にお披露目していたと言われています。そのミニチュアが雛人形の御道具類として使われるようになっていったとされています。また庶民の間で「結納金」の慣習が広まり、その中から用意するという考え方が残っていると考えられます。

もう一つの理由としては節句の祝い方です。
現代と比べると、昔の初節句のお祝いはもっと盛大に行われていました。お嫁さんのご両親だけでなく、親族一同集まってお子様の誕生をお祝いしていました。特に跡取りの初節句ともなれば尚更です。そのお祝いの席をご準備をするのは他でもない父方です。母方はご招待を受けお招きいただく立場となります。祝いの席の準備も節句人形の誂えも父方ではお嫁さん(娘)の立場を考えると心苦しいものがあります。なので母方が節句人形を贈り、両家のバランスを取るようになった訳です。

以上の理由から一般的には母方からと言う訳なのですが、やはり最初に申し上げた通り、「ケースバイケース」となります。

跡取りという考え方から五月人形は父方が、という事も有れば、父方の家系が男の子ばかりで、待望の女の子で「是非うちで雛人形をご準備させてください」という事もあるかもしれませんし、現在ではご両家でお金を出し合うという家庭も珍しくはありません。

いずれにしてもお互いの考えだけで決めるのではなく、ご両家でご相談されるのが最良です。節句の時期が近づいてから「先方から雛人形(五月人形)が届かない。来るものとばかり思っていた」と文句を言いながら来店される方も稀にみえます。それこそお嫁さんの立場を思うと心が痛みます。

お金も関わってくる話なので、お伺いが立てづらいかとも思いますが、お生まれになったお子様にとっても、パパやママにとってもご両家が円満である事が一番です。お子様の誕生を祝う気持ちはご両家一緒です。ぜひ皆様で楽しいお節句のお祝いをしてあげてください。